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ポール・オースター『孤独の発明』読了。

ポール・オースター『孤独の発明』読了。

当時すでに詩人として活躍していた作者の散文デビュー作。

稀代のストーリー・テラーと称賛される作者だが、ここに描かれているのは、孤独に向かって加速度的に収斂していくひたすら絶望的な(にも拘わらず読者の心を捕らえて離さないスリリングな)いつもの展開ではない。

描いたのは、その死をきっかけに父について何か書き残そうとする苦闘の果て、その父が「いつもそこに存在していなかった」理由をついに知る作者の姿であり、古今の哲学書や古典さらには旧約聖書からの引用を『記憶の書』に淡々と書き留めていく作者の姿である。

この「書き留める」作業により作者がたどり着いたある「真理」。それを見失いたくないがゆえに、作者は孤独と絶望をテーマにした作品を永遠に生産していくことになるのだが…

それはともかく、単調で難解だと敬遠されても仕方がないこの「物語」ですら一気に読ませてしまう力量は、さすがオースター!と改めて脱帽せざるを得ない。

オースター・ファンにとって必読の一冊であることは間違いないが、そうでなくても読んでみて損はないと思う。作者が見出だした「真理」にはきっと共感できるはずだから。

カテゴリー:海外文学
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